JR大阪駅前広場・歩道について(石埼学の個人的見解)(転載) [反戦ビラ闘争日誌]
JR大阪駅前広場・歩道における表現活動に対する妨害行為の中止を求める憲法研究者声明 [反戦ビラ闘争日誌]
【JR大阪駅前広場・歩道における表現活動に対する妨害行為の中止を求める憲法研究者声明】
2013年末以来、JR大阪駅前の広場および歩道における市民の平穏な表現活動に対し、JR西日本職員および大阪府警警察官らから不当な妨害行為が加えられています。私たちは、憲法の研究者として、本妨害行為が憲法21条1項が保障する表現の自由を著しく不当に侵害するものであることに鑑み、JR西日本と大阪府警に対し強く抗議するとともに、このような行為を直ちに中止するよう、強く要請します。
本件においてそのチラシ配布・署名集め・カンパの呼びかけ等の表現活動を妨害されているのは「辺野古に基地を絶対つくらせない大阪行動(以下、「大阪行動」と表記する)」という市民団体です。9年ほど前から毎週土曜日の午後に、JR大阪駅南口の駅前の広場および歩道において、なんらトラブルを起こすことなく、420回以上、平穏に宣伝活動を行ってきましたが、2013年末以来、突如としてその活動を妨害されるようになりました。
妨害は、ビラ配布にとどまらず、ゼッケンの着用や旗によるメッセージの伝達に及んでおり、他者に意見を伝えるという表現活動そのものが事実上禁じられていると判断せざるをえません。このような妨害は、憲法によって厳しく禁じられている、表現に対する「事前抑制」(表現がなされる前に規制すること)にあたる強い疑いがあります。
妨害行為の理由として、JR西日本は、主に、①「大阪行動」と「在日特権を許さない市民の会(以下、「在特会」と表記する)」との間に不測の事態が起こる恐れがあること、②「大阪行動」が宣伝活動を行ってきた場所はJR西日本の「管理地」であることの2点を挙げています。
しかし、①に関しては、在特会が暴力を含む物理的介入をしてくる可能性があることを理由に、「大阪行動」の平穏な宣伝活動を規制することはできません。なぜなら、「敵対的聴衆」の存在を理由として表現の自由を規制することは、憲法上許されないからです。そのことは、最高裁も(「公の施設」の使用許可に関してではあるものの)「主催者が集会を平穏に行おうとしているのに、その集会の目的や主催者の思想、信条に反対する他のグループ等がこれを実力で阻止し、妨害しようとして紛争を起こすおそれがあることを理由に公の施設の利用を拒むことは、憲法21条の趣旨に反するところである」(最判平成7年3月7日、民集49巻3号687頁/泉佐野市民会館事件)と確言しています。少なくとも、「大阪行動」の過去9年間の活動実績に照らしても実質的な害悪の発生がまったく予想されない以上、そのような恐れは、現在「大阪行動」の表現活動に対してなされている妨害の理由には到底なりえないと考えます。
また、②に関しても、JR大阪駅前の広場および歩道がJR西日本という私企業の私有地であり、「管理地」であっても、このように公道との区別が判然とせず、誰もが自由に通行できるきわめて公共性が高い空間は、典型的な「パブリック・フォーラム」(歴史的に表現活動の場として利用されてきた場所)に該当すると考えられ、公道と同様に、通行人等の交通の秩序を著しく阻害する等の特段の事情がないかぎり、表現行為の規制は原則的に許さ
れません。なぜならば、駅前の広場や歩道での表現活動が管理者の意思次第で規制されるのであれば、多くの一般市民は不特定多数の者が集まる場所でのビラ配布等により見知らぬ他者に自己の見解を伝達する機会をおよそ失うことになるからです。
自由民主主義社会における政治的決定は、自由な意見の交換の結果でなければなりません。私たちは、「大阪行動」が通行人に意見を伝達することを妨害するJR西日本と大阪府警の行為は、自由民主主義社会としての日本社会のあり方を深刻に傷つけるものであり、本妨害行為が継続されるならば「人権・自由・民主主義」といった「普遍的」(日本国憲法前文)価値を共有する自由主義世界において日本国が嘲笑と侮蔑の対象となりかねないと考えます。私たちは、JR西日本と大阪府警に対し、このような妨害活動を直ちに中止するよう、強く要請します。
2014年1月31日
<呼びかけ人>
石川裕一郎(聖学院大学)、石埼学(龍谷大学)、岡田健一郎(高知大学)、笹沼弘志(静岡大学)、中川律(宮崎大学)、成澤孝人(信州大学)
<賛同者/2014年1月31日午後5時現在>
青井未帆(学習院大学)、植松健一(立命館大学)、内野正幸(中央大学)、浦田賢治(早稲田大学名誉教授)、大野友也(鹿児島大学)、小林武(沖縄大学)、清水雅彦(日本体育大学)、高作正博(関西大学)、塚田哲之(神戸学院大学)、永山茂樹(東海大学)、船木正文(大東文化大学)、森英樹(名古屋大学名誉教授)、金澤孝(早稲田大学)、寺川史朗(龍谷大学)、松原幸恵(山口大学)、上脇博之(神戸学院大学)、植村勝慶(國學院大學)、成嶋隆(獨協大学)、前原清隆(日本福祉大学)、渡邊弘(活水女子大学)、福嶋敏明(神戸学院大学)
以上21名(「呼びかけ人」含めて27名)
国公法弾圧2事件最高裁判決並びに三鷹UR団地ポスティング弾圧事件に関する声明 2012年12月21日 立川自衛隊監視テント村 [反戦ビラ闘争日誌]
立川テント村では以下の声明を発表しました。(管理人)
国公法弾圧2事件最高裁判決並びに三鷹UR団地ポスティング弾圧事件に関する声明 2012年12月21日 立川自衛隊監視テント村
2012年12月7日最高裁第二小法廷(千葉勝美裁判長)は二つの国公法弾圧事件に関する判決を出し、いずれも上告棄却とした。これにより堀越さんの事件では無罪が、宇治橋さんの事件では有罪(罰金10万円)が確定した。堀越さんの事件の無罪は当然であるが、一方で宇治橋さんが当時課長補佐という管理職の立場にあったことを理由に「職務の遂行の政治的中立性がそこなわれるおそれがある」として有罪を認めたことは極めて不当である。本来この判決は猿払事件の判例そのものを見直し、大法廷で審理されるべきものであり、弁護団はそのことを強く主張してきた。最高裁はその要求を無視し、公務員の政治活動に制限をかける余地を残す矛盾した二つの判決を下した。このことに対してテント村は強く抗議する。
日本では2004年~2005年にかけて自衛隊官舎、マンション、卒業式などでのビラ配布に対して弾圧が相次いだ。住居侵入罪や威力業務妨害罪、国家公務員法違反などその都度罪状は違うが、イラク派兵という国家が初めて直面する緊張した状況下で、反戦運動に冷水を浴びせ、公務員の政治活動の萎縮を狙って立て続けに起こされた弾圧であることは明らかである。堀越さんの逮捕に際しても、多数の公安を動員してビデオ撮影を行い、執拗な証拠収集を行ったが、明らかに左派/革新勢力を狙い撃ちにした弾圧だった。こうした事態に対しては、2008年には国連自由権規約人権委員会が表現の自由に関して不合理な制限を撤廃すべく日本政府に勧告を行っている。
国公法事件では二人は休日に私服で、共産党の機関紙やビラをポストに配布していただけであり、そうした政治活動は日本国憲法でも定められている権利の当然の行使に過ぎない。これを違法とすることは、大阪市での公務員の思想の不当な統制などに見られる動き同様、公務員の国家体制への従順な屈服を要求するものであり、断じて認められない。猿払事件の判決そのものが破棄され、無罪が宣言されるべきだったのだ。
この判決翌日、三鷹ではUR団地において宇都宮候補支援の法定選挙ビラをドアポストに配布中の男性が住民の通報で逮捕されるという事件が発生した。検察側の勾留延長請求は却下され、男性は11日には釈放された。だが、原発への反対をはっきり主張する宇都宮候補支援のビラだったからこそ弾圧されたのではないか、という疑いはぬぐいきれない。選挙期間中に集合ポスト・ドアポストへのビラ配布は、精力的に各政党で行われる。これを犯罪行為だとすることは、選挙活動への大幅な制限にあたり、憲法で定められた権利の行使の不当な制限につながる。逮捕自体が全く不当であり、警察と勾留を請求した検察側は謝罪すべきである。
一連のビラまき事件では堀越さんの事件のみが唯一最高裁での無罪を勝ち取った。長い裁判を闘い抜いた本人や支援者、弁護団の苦労は大いにねぎらいたいと思うが、宇治橋さんの事件の有罪、翌日の三鷹ポスティング弾圧事件の発生を思えば手放しで喜ぶわけにはいかない。立川テント村はこうした不当な政治活動の制限、表現の自由の侵害につながるポスティング弾圧に対して、全国の、世界中の人々とともに断固として今後も闘うことを改めて宣言し、声明とする。
立川自衛隊監視テント村
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