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自衛隊アフガニスタン派兵に厳重抗議する声明 2021年8月31日 立川自衛隊監視テント村 [その他の闘争日誌]

自衛隊アフガニスタン派兵に厳重抗議する声明
2021年8月31日 立川自衛隊監視テント村
 
 米軍の撤退開始にともないイスラム主義勢力のタリバンがアフガニスタンの全土をほぼ掌握した。現地では旧北部同盟の支配地域もある一方で、首都カーブルでのISによる自爆攻撃も発生し、タリバンや米軍兵士、市民など約200名が死傷するという悲惨な事件も起きている。現地の情勢は流動的で各国の大使館などは機能を国外の公館に移し、状況の分析に努めている。
 このように極めて不安定な状況の中で日本政府は8月23日に国家安全保障会議を開催し、自衛隊機3機と陸自中央即応連隊100名以上もの大部隊を現地邦人や協力外国人を救出するという名目で派兵することを決定した。しかし、現地の人は容易に空港までたどり着くことが出来ない有様で、そもそも救出が可能な状況なのかどうかもわからない。この派兵は派兵そのものを自己目的にした行動であり、現地での戦闘も辞さないという前提の暴挙である。直ちに派兵を中止し、C130輸送機、C2輸送機をすべて日本に引き揚げるべきである。
 
 そもそもアフガニスタンが不安定な情勢になったのは大国の度重なる軍事介入による。1979年旧ソビエト連邦はアフガニスタンで成立した同国初の社会主義政権が極めて脆弱であり、崩壊の可能性があることから、大部隊の軍事侵攻で強引にそれを支えようとした。しかしムジャヒディーンと呼ばれる武装勢力の軍事抵抗にあい、10年間の派兵の末、撤退を余儀なくされる。ムジャヒディーンには米国もCIAを介しての武器供与などを行っているが、これがその後のタリバンの母体にもなっている。
 その後社会主義政権は崩壊し、ハザラ人らの北部同盟とパシュトゥーン人を中心にしたタリバンなどの間で長い内戦が続いた。ようやくタリバンが優勢になり全土を掌握しつつあった頃2001年秋に「同時多発テロ」と呼ばれる事件が米国で起きる。
 米国はオサマビンラディンを容疑者として身柄の引き渡しを要求するが、タリバン側は拒否する。これに対して米国はアフガニスタン空爆を行い、タリバン政権は崩壊、新政権が樹立される。だがそれから20年もの間、米国や欧州軍隊によるISAF(国際治安部隊)による活動でも国内の治安は改善されなかった。今回米軍の最終的な撤退開始からまもなく雪崩を打つように現政権政府軍が崩壊していったことでも、民衆がその政権を支持していなかったことは明らかである。
 
 米ソという超大国がそれぞれのご都合主義で軍事介入したが、アフガニスタンの民衆が支持しうるような安定した政権はついに出来なかった。軍事で平和を作り出すことが出来なかったことは明らかだ。地上軍こそ派兵しなかったものの、日本はテロ対策特別措置法を成立させインド洋上での米軍艦艇への燃料補給活動を行うことで戦争協力を行っている。
 だが「対テロ戦争」という現地抵抗武装勢力を絶対悪と規定して行う戦争そのものに大きな問題があった。旧ソ連軍と戦っている間はムジャヒディンは「自由の戦士」だった。その後こうした軍事勢力の一部も加わって全土を掌握しつつあったタリバンだが、それは「同時多発テロ事件」以降「テロリスト集団」なのである。こんな身勝手なご都合主義で戦争を行い、アフガニスタンでは多数の人々が殺されてきたのだ。 米兵だけでも2500人近くが戦死したがNATO加盟国軍の合計戦死者は3600人にもなる。だがそれ以上に現地の人々は殺されてきた。5万人を超える武装勢力の人々が戦死し、民間人などの死者は11万6000人に及ぶと言われている。最終的な段階では米国はタリバンを交渉の相手と認めて和平交渉を行い、アフガニスタン撤退の段取りを決めていったのである。つまり「テロリスト集団」の規定をやめたことになるが、これもやはりご都合主義である。
 
 こうした軍事介入に反対し、あくまで非武装で現地の事情に見合った治水活動、農業の発展や医療活動を行ってきたのが国際NGO「ペシャワール会」である。医師でもあった同会の故・中村哲氏は「自衛隊のアフガニスタン派遣は百害あって一利無し」と言いきっていた。武装することで現地の人々の不信を招くより一切武器を持たない活動こそが受け入れられると考えていたのである。武装勢力の一部に中村さんと伊藤さんが殺害されたが、それでも同会は活動をやめていない。今回も現政権崩壊後にしばらく情報収集を行っていたが、東部の治安状況が安定していることから「ダラエヌール診療所」での診療活動を再開したという報道がある。また現地州政府からも用水路の事業再開へ向けての打診が来ていることを明らかにしている。
 
 日本政府が見習うべきはこうした現地の人々に寄り添う姿勢ではないのか。極めて曖昧な状況下で派兵を行ったのは新型輸送機の実戦試験や自国の国威を示すためだけだったのではないか。27日時点で1名の邦人救出や十数人のアフガニスタン人救出が伝えられるが、ほとんどは空港に近づくことすら出来ない状況だ。そもそも邦人を乗せることが出来る展望はあったのだろうか。
 タリバンは人権侵害問題や議会制民主主義に反対の態度で批判されている。だがそうしたタリバンでも腐敗した政府軍よりましと考える人々は多かった。また一方ではタリバンから村を守るため旧北部同盟系の武装組織に頼る地域もある。現地のこうした難しい状況を理解し、その中で少しずつでも政治や社会運動が成長できる地盤を作ることこそ真の支援であるし、憲法9条の精神もそこにあるのではないか。憲法違反の自衛隊という軍事力を投入することは全く逆効果であることはこの40年間で明らかだ。
 
 日本政府は直ちに自衛隊全部隊を現地から引き上げるべきだ。そして現地でのペシャワール会などのNGOなどが平和裏に活動を維持出来るようにあらゆる努力を傾注すべきなのである。


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